Cat's Brand ~ライブorアルコール~

ライブと酒とその他日常ネタです。

KOTOKO「硝子の靡風」アルバムレビュー後編


8.Re-sublimity

・アニメ「神無月の巫女」の主題歌ですね。…すいません、アニメに関しては全然知りません(;´Д`) タイアップ曲に関しては、作品内容にまで踏み込んだ歌詞を書いてくれますKOTOKOさん。「タイアップだからといって、それに合わせるつもりはない」とか言い訳をほざくアーティストが多いですよねぇ。それは単に「合わせられない」だけではないかと。合わせられるのも才能、そんなKOTOKOさんが大好きです。しかし…そのため、歌詞については読み解けないことをご了承ください。
・曲調は、もうひたすらに高瀬氏の得意とするところだなぁ、と。「ため息クローバー」がKOTOKOさん寄りのI've楽曲だとすると、この曲は高瀬氏寄りのI've楽曲です。ある意味ワザととも思えるほど、何と言うか…分かりやすい曲です。ただ逆に、KOTOKOさんの魅力を発揮できる曲かと言われると…個人的には疑問符が付きます。このテンポでこれだけKOTOKOさんが魅力全開でやってるのに、なんだそりゃ?って意見かもしれませんが…。それでも、この曲はあまりに無機質な歌だ。その点だけが不安というか不安定というか空しいというか。正直、この曲だけはアルバムには相応しくないと思いましたよ。「孤高」であるべき曲を、アルバムに入れなければいけないという矛盾。それすらも昇華しようとするコンセプトは潔いのか、愚かなのか。ぶっちゃけ、先行シングル収録には、どのアーティストも苦労してると思いますけど(笑)。「Wing My Way」が無ければ2曲目だったでしょうね。もったいないと思いつつ、ライブでは盛り上がってるし、と思いつつ、この曲は「硝子の靡風」にはいらなかったかなぁと思う私でした。念のため。素晴らしい曲だと思うし、もちろん私は好きですよ。



9.硝子の靡風

・アルバム表題曲。聴いた、悩んだ(笑)。そして個人的に出した答えは……鎮魂歌だろう、ということ。この曲を聴いてまず浮かんだ情景は、私の両親の実家。「民話のふるさと」として全国的にも有名なその土地は、緑が多くて、山々に囲まれて、やさしい空気に包まれていて、でもどこか寂しげな…そんなところなんです。そして思い出したのは、あの場所を無邪気に駆け回って遊んでいた、私の幼少時。正にCDジャケットの風景とシンクロしてました。結構その感覚は「どうしてだろう?」と疑問に思うほど突然に湧き上がってきたものなので、この曲の感想は「それ」で、「それ」だけでいいのか?と思い悩んだわけです。でもこうして213回(現在時点)聴いてみて、間違ってないかな?と思えるようになったので、あえてそのまま書いてみました。
・比較的明るいメロディにのせて、詩っているのは人生の終わりの時。今作通してのテーマ「重い詩を明るく唄い、そこに生まれる表現的ギャップを魅力とする」、表題曲として満点ですよ。「空までは追えそうになくて」でボロ泣き、「君よりも上手にね 叶えてみせるよ」にボロボロ泣き。このへんは、ある程度歳いってないと分からない感覚ですか。爽やかな靡風に乗せて〜 あるのは「ひと」のこころだけ。この曲は、こころをうたうのではなく、こころのうまれる世界をうたっている。負け。ほんとに負けた。これ以上書けないです。…一番感想書きたい曲こそ、なんにも言葉が出てこないのですね。ぜひぜひ感じてもらいたいです。



10.421 -A Will-

・「421」というタイトルだけでピンときた人、あなたは偉い。「0421」だったらもっと分かりやすかったか。KOTOKOさんメジャーデビューの日をかけた、その思いを歌った一曲です。テーマはやはり「感謝」だと思う。そんなそんな、俺らが好き勝手についていってるだけなんですから(笑)。構成的には、前作の「Gratitude〜大きな栗の木の下で〜」に当てはまる曲。だけど、より直接的になった歌詞、直接的になったメッセージ。その違いが、この曲を読み解く上で重要かなぁと。夢の舞台へ立つ「土壌」に感謝しつつも、両者の決定的な違いは「現実感」。良く言えば、地に足が着いた。逆に言えば、飛翔のイメージが弱い、と。原動力と言えるファンの「顔」が見えてしまったがために、こういう違いになったのではないかと思います。こう書くとむしろファンの顔が見えないほうがいいと表現しているようですが…う〜ん、あながち間違いじゃないような(笑)。「Gratitude〜大きな栗の木の下で〜」は良くも悪くも壮大な作品でした。だって根付いているのは、目の前で見上げているこの栗の木なのですから。それが今度は自らが根付いて来た。スケールから言えばどうしてもコンパクトになってしまいます。そのへんで、魅力はまだまだこれから育っていくという願いと想いを込めて…この曲を聴きたいと思います。



11.Free Angels

・今はもう飛べなくなってしまったモノのおはなし。いよいよアルバムとしてのストーリーも終わりに近づいてきました。タイトルは「堕天使」という意味合いで受け取りました。羽を奪われ、地に伏した天使たちの歌声。「底」から見える大空は悲しくて綺麗だと、私はそういう情景を思い浮かべました。詞が非常に暗く聴こえてしまうところなんですが…これが面白いところで、全体の意味を考え始めると途端に、広がりを持った、凄く光の見える曲になります。いやそれでも詞は暗い(笑)。光と闇とのコントラスト。羽は思い出、羽根は今ある光。個人的には「Wing My Way」の対に位置する曲だと思います。詞の最後の2行は、「Wing My Way」を指していると考えるとすっきりするかな、と。あの2行が何を意味するのか、ずっとずっと悩んでいたんですが……う〜ん、難しい。
・この曲、KOTOKOさんが高熱出して浮遊感漂う状態でレコーディングされたと聞きました。だからなのか、常に危うい雰囲気を醸し出してます。足付いてるこの地は、本当に大地であるのか? そんな感じで。こういうのを狙ってやられると、ファンとしては色々な意味で堪らない。マニアックに惚れるというか(笑)、普段から毒も闇も常に求めてしまいがちになりますよ。願わくばこういう曲はアルバムごとに一曲だけで。



12.β-粘土の惑星

・昨年夏のライブのパンフに付いてきたCDからの再収録。ライブでも演奏られず、このままひっそりと消えていく悲運の名曲か…と思われましたがここへきて大復活を遂げました! 既発曲の中では、テーマ、詞、曲調全てがマッチしていて、不自然さを感じさせないのが好印象。配置もよく考えられています。
・冒頭の一言 『本当だった…』 これがどこにかかるか、それが全てと言ってもいいこの曲。「君」という存在との別れを描いているのは分かるんです。共に歩んで、想い合って、そして全てが思い出に切り替わってしまう瞬間。その空白、空虚、隙間が『本当』だったと言っているのか。いやそれとも、出会いからすべての存在を言っているのか。「君」という存在が本当だったのか。私はどれもが正しくて、どれもが本質を突いてないような気がします。何もかもが曖昧で、分かりきれない。きっとそのことが『本当だった…」と言っているような気だけはします。



13.赤い玉、青い玉

・ラストを飾るのは、KOTOKOさん版の「しゃぼん玉」、今から眠りにつく「僕」を歌った曲。悲壮感はなく、安堵感に包まれた優しいメロディ。思い出を懐かしみ、「君」を案じて、「僕」は行くと言っている歌詞。ああ、これは間違いなく葬送曲。「硝子の靡風」が表なら、この曲は裏。そんな歌を、優しく歌い上げるKOTOKOさんは素晴らしい。赤い玉は「僕」、青い玉は「君」、これ以上の説明は不要で…とにかく感じてください。アルバム=人の一生として持ってきて、最期に綺麗に締めてくれました。うん、綺麗だ。




▼総括

 1stアルバム「羽 -hane-」から、数段上を目指したのがよく分かる2ndでした。詞的にも、曲的にも。アレンジを抑え、歌を素直に前面に押し出すことにより、綺麗で魅力的なKOTOKOさんの歌声が、より多くの人の心を捕らえていると思います。完成度から言えば、それはどんなアーティストにも言えることですが…どうしても 1stより落ちます。ただ、新たなテーマを掲げ、それに向かううちに新たな魅力を発見できた、決して悪くないアルバム。そしてここも重要…ライブのことをも考えた曲作りをしてきた、ということ。「経験」というのは果てしなく大きなチカラになるのだなぁ、と一ファンとして嬉しく思います。
 アルバム構成は、ファーストインプレッションのとおり、先行シングル曲がやや邪魔をした感じで、それ以外は前作より良かった。曲もバリエーション豊かで、I'veの枠に囚われず、KOTOKOさんらしさが良く出ていました。特に「ため息クローバー」「ささくれ」「硝子の靡風」。こういう曲をもっともっと大事にしてほしい。これだけだと疲れるけど(笑)。
 好きな曲トップ3を上げるとすると、1.RETRIEVE 5.Meconopsis 9.硝子の靡風 かな。Wing My Wayは規格外(笑)。そんな感じです。

 

▼そんな感じで、長くなりましたが以上でレビュー終了。ご意見、ご感想、誠意ある文句を募集しております。