Cat's Brand ~ライブorアルコール~

ライブと酒とその他日常ネタです。

マリア様がみてる「あなたを探しに」読了。感想などを。(ネタバレ若干)


 〜 探し物は、見つかりましたか? 〜



 あまりにも優しく流れるこの作品の空気が、とても愛おしい。「秒速5センチメートル」とはまるで正反対だ(笑)。創作物として、予定調和というのはすごく重要で・・・メチャメチャ感動するわけではないけれど、強烈な印象を持つわけではないけれど、心を傷つけないこともまた素晴らしいと思うのです。

 瞳子の抱える傷を、痛みを、空白を・・・祐巳は癒すことも埋めることもできないかもしれないけれど。(まあそういう「役目」は令&由乃に任せておけば(笑)) 結局は自分の足で立ち上がるしかない、本当に大切なことを、祐巳は側に寄り添うことで・・・見守ることで支えになろう、と。この距離感の描写を私は随分と楽しませてもらいました。この辺を「おあずけ」やら何やら批判めいた発言で汚されるのが非常に悔しかったのですが、ようやく納得してもらえるんじゃないでしょうか。

 またそれ以外にも、白薔薇の系譜の縮図を表現したかのようなあの展開といい、由乃&ちさとの等身大の関係といい、すごく密度の濃い1冊だったと思います。初期の、1冊完結型であった頃を思い出す作りでしたね。