Cat's Brand ~ライブorアルコール~

ライブと酒とその他日常ネタです。

「この青空に約束を―」もの凄くネタバレしまくりの感想本編その4(最終回)

 たいしたこと書いてないのに、どえらい時間かかりました。しかも読み返してみると、全然ネタバレしてないような気が(笑)。とりあえず今回が最終回です。


 約束の日、とは、額面どおりに表現すれば「つぐみ寮での、つぐみ寮からの別れと旅立ちの日」でしょう。本編で航も言っていたとおり、忘れることのできない痛みを分かち合おう、と。後ろ向きに見えて、現実的に非常にポジティブな思考。事実、物語では確かに・・・メインヒロイン全てのエピローグでそれは、2人の、みんなの糧となっている。間違いない。そういう未来へ続く幸せを感じさせるのは、丸戸シナリオの醍醐味でもあります。

 しかし。ここにネガティブな「希望」は本当に存在しなかったのか? 悪戯に残酷な、航だけが味わわなければならない、黒い夢を思い描いてしまう心の有り様。それこそが、茜ルートで示されたこの物語の裏の顔・・・航ひとりのための物語だと思うんですよ。


 9ヶ月後というテロップの後ろに描かれているのは、つぐみ寮の無い夏。そして、つぐみ寮生がもうこの島にはいない現実です。守りたかったモノを無くしても、その事実から逃げたくても、それでも、その場に存在しなければならない航。教師として赴任してきたさえちゃん先生とはどうしても違う・・・生まれ育った南栄生島からは離れられない航は、考えることを放棄してしまいます。つぐみ寮跡地に足を運ばなかったことからも、まとわりつく現実から目を瞑り、耳を塞いでしまったことが伺えます。
 約束の日を迎えることなく、つぐみ寮は無くなり・・・寮生の夢、願いをすべて絡め取って終わった現実。しかし、よく考えると・・・人生の振れ幅としてはさほど大きくない。「忘れることのできない痛みを分かち合う」ことに関してはこれ以上ない。では、なぜ航はあのような状態にまでなってしまったのか?


 航は、どこかで、安楽な希望を抱いていた。


 少年が夢見る、現実に逆らった理想。女性の扱いに長け、その前後からよもすれば大人に見られがちな「少年」は、どこかでアテのない「都合のいい未来」を希望していたのではないか。私はこのことをずっと考えていました。

 「ひょっとしたら、頑張れば、皆が島を出て行かずに済むようになるかもしれない」


 楽観が招く、大人へのエスカレーター。どうあっても、現実には勝てない。航は打ちのめされる。

 ここで仮想をひとつ。「メインヒロインの誰とも結ばれず、約束の日を迎えられたら?」 いったい航はその後どうなったか。私は、“そんなルートが存在しない”ことを拠り所とし、結局は茜ルートと同じ結末になるのでは、と考えました。つぐみ寮は終わった。少年少女が思い描いた理想は、現実に浸食され、拠り所がない航は自分の理想に食いつぶされる。結果、茜ルート入り、のような気がします。拠り所のある各ヒロインルートでは、それにすがって逃げる。言い方は悪いけど。


 そして、茜ルートです。茜という存在は、ゲーム序盤から終盤まで、もうひたすら脇役に徹するわけですよ。立ち絵まで何か儚げな感じで(笑)。しかし彼女には奥の手である「逢わせ石」があった。茜の存在をシャワーと例えたのは言い得て妙で・・・全てを洗い流す役目を彼女は得る。現実では・・・近くにいつもいる「彼女」。理想では・・・「逢わせ石」。結果、航は立ち直り、「少年」から一歩踏み出した「夢」に向かって再び走り出します。そして、



追伸。

7人目の妻ができました。
当日、連れていきますので、
みんなも、仲良くしてやってください。



 つぐみ寮は確かに在り、ここに「約束の日」は果たされた。再び出会えることこそ夢であり、希望であり、つぐみ寮での「約束」。無くした大切ものを取り戻す、これ以上のカタルシスはありません。 まいった、やられた、もう降参。


 エロゲー的要素をアンチテーゼに、様々な要素をぶち込みすぎたこの作品。評価は様々でしょうが、ひとつだけ。上辺だけで判断するのはもったいないです。丸戸信者ならなおさら。はっきり言って、私の考察はまったくもって思い込みすぎのとんちんかんな内容だと思いますが、消化のきっかけになれば幸いです。



 以下、本当の感想を。


 丸戸作品は最重要ヒロインに「〜子」と名が付いています。今回はそれで言うと奈緒子さんが該当。しかし全体的に控えめだったせいもあり、衝撃までには至らず。それなりに好きな感じではありましたが、確かに中の人の声が○校生には思えん(;´Д`) 演技は良いのですけど・・・。凜奈さんはもうちょっと激しく出番がほしかったかな? エロシーンも(笑)。海巳はもうきっちりとウザイキャラを演じていただきまして最高(笑)。静はもう南お姉さんなので問題なし。一番泣けた。宮穂はエロさが目立ったけど、それ以上に裏取りとして重要の立ち回り。さえちゃんは今更言うことはない! ダメ萌え教師No.1!
 このくらいの年代の書いたにしては比較的大人しめのシナリオ。パロディ異常に多し(笑)。日常会話が面白く、それを逆手に取ったような浅く見せた深い物語は、本来の評価をぐらつかせる感じ。落ち着いてプレイしてほしいです。
 CGは・・・う〜ん、どうだろ? 正直「パルフェ」より良くなったという印象は無い。エロシーンが特に。立ち絵は、凜奈さんが可愛かったので良し。次に期待してます。
 演出。可もなく不可もなく。というかこれで丁度いい。動きすぎるのも問題だと思う一派ですので(笑)。
 音楽。バッチリ。しかし約束の日エンドの歌はやりすぎだと思うのは俺だけ? 正直退いた(;´Д`) それに比べて・・・KOTOKOさんの歌はもう最高。プレイして、クリアして、考察して、感想書いて、それから聴いたこの主題歌は・・・この上ない素敵な歌でした。やっぱりKOTOKOさんの作詞は神懸かりだし、メロディも心に染みる。逆に言えば、心に染みなければまだまだこのゲームでやり残したことがあるということに他ならないのではないでしょうか。説明長すぎましたごめん。

 とにかく、プレイしないともったいない。けれど半端な覚悟ではしゃぶり尽くせない作品でした。比較するのは心苦しいですが、好きなのは前作「パルフェ」、引っ張られたのは「こんにゃく」、そんな感じでした。長々とお付き合いいただきありがとうございました。